main story
七、
晴れた空の下、美しいせせらぎが聞こえています。お城と城下町を隔てるお濠にかかった橋の下を、遊覧船が通り過ぎて行きました。
「ねぇ、本当に行くの?」
「うん、だって見に行くだけでしょう?それに、和菓子屋さんなんだからお客としてならなんの問題もないんじゃないかしら」
「……みつ、もしかして和菓子食べたいだけなんじゃ」
うふふ、と笑う黒魅津を前に、白珠玉は何も言えなくなってしまいました。どんな思惑があろうと、彼が自分の問題を解決してくれようとしていることには変わりはありませんから。
「……じゃあ、見には行くけど……でも話すのはまた今度でも良くない?展開急すぎて心の準備全然できてないんだけど……」
「もう、タマのヘタレ!こういうトラブルは時間経てば経つほどめんどくさくなるって相場が決まってるんだから!それに、謝りたいんでしょう?」
「そ、そりゃまぁ、もちろんそうだけど……でも最後に会ったの学校入る前だよ!?もう今更手遅れでしょ!」
「……なら、ずっとこうやって罪悪感抱えたまま生きていくの?僕、笑ってないタマは嫌だよ……」
黒魅津が、白珠玉の手を引きます。
「……許して、くれるかな。」
「うーん、分からないけど……でももし、その花観月さんが今でもそれに縛られてるのなら、タマが解いてあげないと、じゃない?」
「……うん、それもそう、だよね……」
「ね、僕も居るんだもの。大丈夫。何かあったら僕が助けてあげる」
「ぜ、絶対だぞ⁉本当に頼むからな⁉」
念を押すようにして白珠玉は黒魅津の手を握り返しました。
「じゃあ、行こうか」
お濠にかかった橋の真ん中で二匹は手をつないで、なにやら小声で唱えたかと思うと、次の一歩を踏み出したころにはその姿は見えなくなってしまいました。
さて、ここからは、妖怪たちの住む「異界」でのお話です。