main story
六、
「……それから、おれは学校で寮暮らしになって神有月の間に出雲まで行くことはなくなって、連絡とることもなくそのまんま。その時はまだスマホもってなかったから個人的な連絡先も知らないし……」
「自然消滅ってやつだね……」
「いやそれはなんか違う気がするけど」
過去の事を話し終えた白珠玉は、なんだか寂しそうな顔をしていました。
「学校入って色々あって、俺、酷いこと言ったなってずっと後悔しててさ……もしかしたら、あの一言にあいつは今でも縛られて生きてるかもしれないって思うと……ただただ、申し訳なくなる」
白珠玉自身、自分の出自を理由に心無い言葉をかけられた経験があったため、思うところがあったのでしょう。
「まぁ、親経由でこっち越してきたの知っただけだし、今更どうって話じゃないんだけどね」
そういって、彼は誤魔化すように笑いました。
けれど、その笑顔が本心ではないことは、黒魅津にはすぐにわかってしまいました。
「それで、タマはどうしたいの。」
「どうって……」
「彼、今近くにいるんでしょう?……会うつもりないなら、こんな話しないかなって」
黒魅津が白珠玉の顔を覗き込みます。それだけ仲が良かったのですから、きっとお互いに嫌っているというわけでは無いのでしょう。
再び悲しそうな顔に戻ってしまった白珠玉が、小さくつぶやきました。
「……できるなら、話がしたい……会って、それで、あの時の事謝りたい」
「そっか」
黒魅津が、泣きそうな白珠玉の頭をそっと撫でました。
そして彼の冷たくなってしまった手を握ると、その片目で白珠玉のことを見つめます。
「タマはとっても優しいもの、きっと上手くいくよ。だって、ぼくの事も助けてくれたじゃない」
「助けた?ああ、この間の……あれはそりゃ、誰だって同じ状況ならするんじゃないの?」
「……あの時だけじゃないよ、その前からずうっと。」
「ええ、いつの話ぃ……?」
戸惑う白珠玉ににこりと笑いかけると、黒魅津は立ち上がりました。
「会うだけ会ってみようよ!僕もどんな方なのか気になってきたし!」
い、今から!?」
「直接聞くに限る、ってタマが言ってたんじゃない!」
「いや、それとこれとは話が違うだろ!?」
「違くないよ!ほら、行こうタマ!道教えて!」
駆け出した黒魅津を追いかけるように、白珠玉も続きます。
外は、この地域にしては珍しく、まぶしいくらいの晴天でした。